路地裏Blue Night.




そいつは最大限に兄として教えられることを、今ここで実践しているんだと。

こんなのレベルが高すぎる情操教育だ。



『侑李、睦月の“兄ちゃん”なら…そんな命令できないでしょ』


『っ…、』



俺に初めて背中を向けた2人の兄弟。

ずっと並んで走ってたのに、そいつらは俺から離れて遠く遠くに行ってしまう。



『待ってよ───…皐月、睦月、』



どこに行くんだよ。

おまえらは俺を置いて、どこにいくの。


でも皐月は兄貴だから、あいつに任せていれば大丈夫だろうと。

俺は無理矢理にもそう思うことにして、藪島組の足止めに向かった。


それなのに───…



『……睦月を……見失った、』


『───…は……?』


『途中まで一緒に…逃げてたんだけど、……いや、ちがう、警察だ、…警察に通報しなくちゃ、』



正気のない顔で、青白い表情で、気を失う少女をおぶりながらも俺の前に現れたのは皐月だった。


藪島組の足止めは無事に終わった。

けれど、娘の保護に向かった2人とは途中でイヤモニの回線が切れてしまって。



『…お願い……っ、はやく警察に、連絡して……、侑李……っ、ごめん、ごめん、』



そいつは崩れるように泣いて、それからしばらくして警察からは1本の電話。


それはとある倉庫にて、鹿野 睦月が遺体となって発見されたこと。


そしてその姿は女の子の服装をしていて、皐月におぶられた方はそれまで睦月が着ていた服をまとっていた───。



< 185 / 282 >

この作品をシェア

pagetop