路地裏Blue Night.
そいつは最大限に兄として教えられることを、今ここで実践しているんだと。
こんなのレベルが高すぎる情操教育だ。
『侑李、睦月の“兄ちゃん”なら…そんな命令できないでしょ』
『っ…、』
俺に初めて背中を向けた2人の兄弟。
ずっと並んで走ってたのに、そいつらは俺から離れて遠く遠くに行ってしまう。
『待ってよ───…皐月、睦月、』
どこに行くんだよ。
おまえらは俺を置いて、どこにいくの。
でも皐月は兄貴だから、あいつに任せていれば大丈夫だろうと。
俺は無理矢理にもそう思うことにして、藪島組の足止めに向かった。
それなのに───…
『……睦月を……見失った、』
『───…は……?』
『途中まで一緒に…逃げてたんだけど、……いや、ちがう、警察だ、…警察に通報しなくちゃ、』
正気のない顔で、青白い表情で、気を失う少女をおぶりながらも俺の前に現れたのは皐月だった。
藪島組の足止めは無事に終わった。
けれど、娘の保護に向かった2人とは途中でイヤモニの回線が切れてしまって。
『…お願い……っ、はやく警察に、連絡して……、侑李……っ、ごめん、ごめん、』
そいつは崩れるように泣いて、それからしばらくして警察からは1本の電話。
それはとある倉庫にて、鹿野 睦月が遺体となって発見されたこと。
そしてその姿は女の子の服装をしていて、皐月におぶられた方はそれまで睦月が着ていた服をまとっていた───。