路地裏Blue Night.
馬乗りになって、何発も何発も殴った。
血と涙でボロボロになりながらも受け止める皐月が、一瞬睦月にも見えて。
あいつは俺たちが居ないといつも泣き虫の甘えん坊だったから。
睦月は最後まで痛くて怖くて、本当は泣いてたんだろうって。
『おまえは睦月の兄貴だろーが……っ!!なんで…っ、なんで……っ!!』
『やめなさい君たち…!!!そんなことしても睦月くんは喜ばない…!!』
警察官に止められたって、俺はただそいつを殴り続けた。
抵抗をしない皐月は『せめて殴ってくれ』なんて言ってるようにも見えたから。
それが変えられない現実なんだと思ってしまって、ただ殴った。
『……ごめん…っ、ごめん、ごめ───…ん、』
ガクッと気を失う皐月は、最後まで謝り続けていた。
いつも皐月は『僕らは睦月の兄ちゃんだから』と、俺も自然と混ぜてくれる。
それは今まで皐月なりの優しさのようなものかと思っていたけど。
そんなのちがう。
こいつは兄という責任を1人で背負いたくないだけだったんだ。
その結果が、これだろう。
『む……つき、』
ボコボコに殴られた酷(むご)い遺体は固く拳を握っていた。
藪島組の大人から暴行を加えられて、そうやって必死に耐えていたんだろうと思っていた俺に。