路地裏Blue Night.




馬乗りになって、何発も何発も殴った。

血と涙でボロボロになりながらも受け止める皐月が、一瞬睦月にも見えて。


あいつは俺たちが居ないといつも泣き虫の甘えん坊だったから。

睦月は最後まで痛くて怖くて、本当は泣いてたんだろうって。



『おまえは睦月の兄貴だろーが……っ!!なんで…っ、なんで……っ!!』


『やめなさい君たち…!!!そんなことしても睦月くんは喜ばない…!!』



警察官に止められたって、俺はただそいつを殴り続けた。

抵抗をしない皐月は『せめて殴ってくれ』なんて言ってるようにも見えたから。


それが変えられない現実なんだと思ってしまって、ただ殴った。



『……ごめん…っ、ごめん、ごめ───…ん、』



ガクッと気を失う皐月は、最後まで謝り続けていた。


いつも皐月は『僕らは睦月の兄ちゃんだから』と、俺も自然と混ぜてくれる。

それは今まで皐月なりの優しさのようなものかと思っていたけど。

そんなのちがう。


こいつは兄という責任を1人で背負いたくないだけだったんだ。


その結果が、これだろう。



『む……つき、』



ボコボコに殴られた酷(むご)い遺体は固く拳を握っていた。

藪島組の大人から暴行を加えられて、そうやって必死に耐えていたんだろうと思っていた俺に。



< 189 / 282 >

この作品をシェア

pagetop