路地裏Blue Night.
事務所内の個人に用意されてる部屋へ向かおうとした足が、ピタリと止まった。
なんでバレた…?
どこだ、その情報源は。
いやでも下っぱが常に追い続けているらしいし、あいつらも毎日のように観羅伎町で馬鹿げたお助けマンなんかをしていれば。
「…どうにも、そのエスローバーはもう観羅伎町から出ていったらしいですけどね」
「ほんまか?なんや、おまえ知ってるんか」
「噂ですよウワサ。どーせ、力もないガキの集まりに過ぎませんから。カシラが出るほどの問題じゃないでしょう」
だから早く出ていけと俺は言ったのに。
どうにかそれ以上探られたくなくて、俺は他の話題はないかと辺りを見渡せば───
「っ…!」
「お前、なんや詳しいな?そこと仲良かったりするんちゃうか?変にワシらに隠そうとしてるやろ?」
すぐ目の前にカシラは来ていた。
悟られないように表情を柔らかくして、愛想よく笑っておく。
こういう顔は元々は得意じゃなかったが、藪島組に入ってから無理にでも身に付けたものだ。
「いいえ、ただ安西さんにこれ以上の手を汚させたくないだけです。さすがに捕まりますよ、ヒト殺しすぎですもん」
そんな俺の返事が面白かったらしい。
かっかっと口を大きく開けて、ぽんぽんと頭を叩いてくる。
ふわっと跳ねる、煙と薬品のような危ない匂い。