路地裏Blue Night.
もし睦月を連れて行かなかったら、少女の保護へ乗り込むのは僕ひとりになる。
そこが怖いわけじゃない。
怯えているわけでもない。
いや、それは強がりかもしれないけれど、弟を危険な目に遭わすくらいなら僕ひとりで行った方がいいとも思っていて。
『僕と睦月で行ってくるよ。…こいつなら大丈夫、やってくれるさ』
だけど、睦月の顔を見たら無意識にも言ってしまっていた。
昔から泣いてばかりで僕と侑李を追いかけてばかりいた弟が、初めて背中を向けたような感覚だったから。
もしこれを成功させれば、α9の名が上がると同時に藪島組から狙われる。
『皐月…!!これはお遊びじゃねーんだよ…!!逃げたって追ってくる、銃だって使う、それがヤクザだ』
それをわかっての侑李の言葉だった。
だけど僕だって兄ちゃんになりたかったのだ。
万が一、睦月になにかあっても守りたいと思っていたし、守れるとも思っていた。
『バッグを盗られた女性を助けるのと、ヤクザに捕らわれた子を救うのと、…なにが違うのかな』
『根本的に…ちがうだろ、…ぜんぶが』
『ちがくないよ。だったら侑李は、いま目の前にある命……見捨てろって言うの?』