路地裏Blue Night.
少しだけ、ほんの少しだけ弟の前で格好つけたかったのかもしれない。
親はいつも僕らに無関心だった。
母親も父親も仕事第一、だから親からの愛情をしっかり貰っているかと聞かれれば素直に答えられない。
だから兄として睦月に教えたかった。
そんな、少し格好つけた気持ちもあって。
『待ってよ───…皐月、睦月、』
聞こえていた。
睦月を追いかけて少女の救出へ向かった僕には、背中に届いた弱々しくてふるえている幼なじみの声が。
だけど、走った。
『その子が拉致られてる倉庫ってここだよな、兄ちゃん』
『うん。睦月、僕の傍を離れないよう───睦月!!』
『そんなこと言ってられないって…!あそこにいる…っ!』
薄暗くて、そこまで広くはない倉庫。
周りを見張っていた数人の目を避けながらも、なんとか中へ侵入は成功。
その奥に眠っている女の子を見つけると、すぐに睦月は走って向かっていった。
『まだ生きてる…!はやく、兄ちゃんこの子の縄っ』
『うん、いまやってる』
固く縛られた手首の縄を外すのに少し手こずっていると、外から男の声が近づいてくる。