路地裏Blue Night.
『兄ちゃんはやく…!見つかっちまう…っ』
『わかってる、』
もう少し、もうすこしだ。
とりあえず見つかりにくい場所へ移動させて、硬い結び目に指を引っ掻けるようにしてほどいた───瞬間。
『ん?おい、ここのドアこんな開いとったか?』
『誰か入ったんちゃいます?』
倉庫の入り口は最初すこし開いていて、けれどそれを2人通れるようにずらしてしまったのは睦月だった。
そんな小さな失態に、ヤクザたちは笑い始めた。
『だーれーやー?ワシらから子ウサギを狙うアホなガキ共はー?っと』
『っ、』
近づいて来ている。
今まで感じたことのない恐怖と不安に、睦月の足は震えていた。
『睦月、この子を連れて先に逃げて、』
『で、でも…!』
『そこに裏口がある。外に繋がってるから、僕が時間を稼ぐ』
13歳の女の子をおぶって逃げるとなると、小柄な睦月には少し大変かもしれないけど。
でもせっかくここまで来て全員すくえないことの方が悔しい思いをするのは僕以上に侑李だ。
それに僕だって侑李に合わせる顔がなくなる。だからせめて睦月とこの女の子だけでも助けられればいい。