路地裏Blue Night.
「…雑貨屋さん…、すごいね、なんかびっくりした」
「ふふ、ずっと夢だったの」
あ、そうなの。
お弁当屋さんじゃなくて…?
確かに朝から晩まで忙しかったもんね。
「お父さんとはお見合い結婚だったし、お弁当屋さんも強制だったわ。お母さんはずっと…雑貨を作るのが好きだったの」
「…知ってるよ。昔からビーズでブレスレット作ってくれたよね」
「覚えててくれたの…?」
「うん。小学校とかでクラスの子から羨ましがられてたから」
いつも夜中まで何かを作ってると思ってたら、お弁当屋さんの常連さんに配るコースターだったり。
そういうお母さんを私はちゃんと見てた。
だから雑貨屋さんを見たときは変に納得もしちゃって。
いまだって落ち着いて話せてる自分にびっくりだ。
「…それにしてもここもまたオシャレな喫茶店だねぇ。お母さんよく来るの?」
「えぇ。お店からも近いし、息抜きしたいときにね」
ぐるっと見渡すと、店内はすべてレトロな造りになっていた。
年季の入ってそうなテーブルにチェア。
カウンター内、珈琲を煎れているベスト姿のおじさんが営むカフェ。