路地裏Blue Night.




ひとりでせっせと作ってるお母さんの表情は確かに切なかったけど、楽しそうだったもん。



「たとえ好きなことをしていたって、いつどんなときも、あの家で、あなた達と暮らしていると常に時間と窮屈に追われてた」



そんなこと言われたって、どうしろっていうの。


じゃあお母さんが出ていった理由って借金返済に疲れたんじゃなくて。

私とお父さんの顔を見たくなかったからってなっちゃうよ、それだと。



「追われてたって…、私とお父さんはそんなにお母さんを追い詰めてた…?」



お母さんの反応はナシ。

ズルいよ、聞いてるんだから。


それに毎日のように追われてたのはお母さんだけじゃないよ。

そんなの私だって同じだよ。



「…ヤクザに追われる怖さ…知ってる…?」


「え…?」


「家に取り立て屋が入ってくる怖さ、知ってる…?」



知らないでしょ、なんにも。


お母さんもお父さんもいなくなって、留守に見せるために夜も電気を消して過ごす生活。

それがどんなに寂しくて苦しいか、知らないでしょ。



「お母さんが出て行ってお父さんが逮捕されて、借金だらけで…施設も親戚も引き取ってくれなくて…っ、
ご近所さんからも色んな噂を立てられて生きる毎日がどれだけつらいか知ってる……!?」



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