路地裏Blue Night.
「…ブルームーンだ、」
青い月だ、青い夜だ。
ここはさっちゃんが独り占めしたかった場所だと言っていて、最初の頃に連れてきてくれた場所。
あれからもう半年以上が経つなんて、走って逃げる毎日だから気づけば季節の流れが早すぎる。
───カタン。
階段を登りきった音が微かに響いた。
屋上の端に体育座りする私に近づいて来ている、エンジニアブーツの足音。
「あんなのバレバレだよ、…さっちゃん」
「はは。いけると思ったんだけど」
どこがだ。
せめてウィッグ被ったりしないと無理だし、マスクとかもあるでしょ。
それなのにサングラスひとつって…。
「でも…お母さんを見つけてくれて……ありがと、」
膝に顔を埋める。
さっちゃんの顔が見れないのは、いまの私の顔を見られたくないから。
あんなふうに母親につよく言ってるところも見られてしまった。
絶対みんなびっくりしてる…。
「澪、」
だからそのはっきり呼ぶのやめて欲しいんですけど…。
さっちゃんはカタカナで呼んでくれる方がしっくりくる。