路地裏Blue Night.
「やめろ…、っ、やめろ……っ!!」
無意識に飛び出したさっちゃんの悲痛な叫びは、これ以上大切なものを奪わないでくれって。
弟に続いて幼なじみまで奪わないでくれ───って、聞こえた。
だってさっちゃんがS.Roberを作ったのって、いつか五十嵐 侑李が戻って来られる場所を守るためだ。
誰よりも“街のお助けマン”で居たかった彼のために。
『さ、つき…、』
『こいつまだ喋りますぜカシラ』
『はっ、それくらい聞いてやろうや。どうせあと30分も持たん』
聞き逃したら駄目。
微かな声だけど、彼はやっと本心でさっちゃんに伝えようとしている。
『やっぱり、おれは……むつ、きの、にいちゃんに……、なれな…かった……っ、』
さいご、彼は泣いていて。
それでも仕方ないと諦めてもいて、やさしく笑っていた。
あなたは本来そんな顔をして笑っていたんだと。
そんなふうに笑う人だったんだと。
『ごめん───…さつ、き』
ぷつり───…。
電波が途切れた。
息を飲むに一苦労、ここからどう動けばいいかも一苦労。
いま警察に通報したとして、一から事情を話す時間すら残ってない。