路地裏Blue Night.




「侑李。睦月からの伝言…遅くなったけど伝えるよ」



そう言われて、彼はすぐに顔を上げた。

それまでずっと伝えられなかった彼等の弟の言葉には、どんな意味がこめられているんだろう。



「あの日…倉庫で、ずっと睦月は侑李にひどいこと言ったって悔やんでた」


「…、」


「侑李に謝っといて欲しいって僕は伝言を頼まれてたけど、…それは自分の言葉で伝えろって僕は言って、」



でも、それは叶わぬ願いとなってしまったんだ。


それでも五十嵐 侑李は待っていた。

その先にさっちゃんから伝えられる言葉を、待っていた。



「あいつね、いつも家でも侑李の話ばっかするんだよ。侑李のことを話さない日なんか無いってくらい」


「…でも俺は、あいつの兄貴じゃない」


「そうかな」



くしゃっと顔を歪ませる幼なじみへ、さっちゃんは微笑んだ。



「“だってオレはα9のお助けマンで、兄ちゃんとユーリの弟だから”」


「…!!」


「…これが、睦月の最後の言葉だよ」



見開かれた目から次第にポロポロと頬へ伝ってゆく。


きっとそれが、彼がずっとずっと待っていた言葉なんだろう。

そしてずっと我慢していたんだろう。

自ら悪へ向かって、悪役になって、それでも睦月の兄であろうとした人だから。



「っ、…ふざけんな、ちゃんと俺に伝えろよ…睦月、」


「兄弟喧嘩ってさ、そんなものなんだよ侑李」



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