路地裏Blue Night.
なんとか追っ手は撒いたっぽい。
だからさっちゃんは私の名前を呼んで、走りながらも少し振り返ってくれる。
フードを被って、目から下はフェイスマスク。
それが彼のもう1つの顔らしい。
「……ごめん、」
「初任務だしもちろん怖いだろうから、無理にとは言わないけど」
別にそれは説教をするみたく怒っている声ではなかった。
出さなかったわけじゃなく、出せない、ってのが正しいかも。
だって道もまだ覚えてないし、陸上とちがって障害物だらけの街での競争だから。
まるで障害物競争だった。
「とりあえず僕を信じてよ、そこは。僕らはお助けマンなんだから。ね?」
そんな愛想いい笑顔に、肩の緊張や不安がストンと落ちたような気がした。
確かに今日の任務、私たちは端から見ればジュエリーショップから指輪を盗んだ、ただの泥棒だった。
けれどそのジュエリーショップは違法店。
そもそも合法の店で売られていた商品を裏ルートで落として、そこで違法販売をしていたらしい。
だから依頼人は、その合法ショップの店長。