路地裏Blue Night.
お風呂空いたよ、的な感じで髪を拭きながらサラッと言ってみた。
なにかを考えながらスマホを操作していたのだろう指の動きがピタリと止まりまして。
「……だれ?」
「いや私が聞きたい。…たぶん、さっちゃんの彼女さんというか婚約者さん」
「…だれかに聞いたの?」
「うん、颯ってやつ」
スマホはテーブルに置かれた。
「なるほど、颯ってやつか…」
そんなふうにノリよく返してくれるとこ、私は嫌いじゃない。
でも今はね、ふざけるときじゃないと思うんだ。
「…あいつ、また勝手に合鍵作ってるし。いい加減にしてよほんと」
ぼそっとつぶやかれた。
確かに鍵を勝手に開けて入ってきてたけど…婚約者だから当たり前かーって納得してた。
でも違ったらしい。
「さっちゃん、私ここ出て行った方がいい…?」
「…なんで?」
「え、逆になんで…?」
なんか今日、こんな会話ばっかりだ。
心無しかさっちゃんの声がいつもより低くなってしまった気がするし、なんか静かだし…すごく。
「もし、この先も任務の報酬がもらえるなら…独り暮らしとか出来るよ私っ」
さすがに彼女さんの立場になって考えてみようの会だ。
人の気持ちになって考えることは大切だって、学校でもずっと教えられてきた。
……うん、こんなの絶対あかんです。