初恋だった人が結婚した【完】
先輩が自分の話を話してくれる時は決まって、わたしが落ち込んでいる時だった。
好きな音楽、好きな動物、好きなこと、面白いと思ったこと。
その話はわたしをいつも心がぽかぽかとした。ぽかぽかすると先輩はわたしの頭をわしゃわしゃと撫でて微笑む。
付き合っているわけでもないし、そんなによく知らない。
ただ1日のうちの数時間だけを共有していただけ。
そのささやかなひと時が一番輝いていた。
そう思えば思うほど馴染めたと思っていたクラスから溺れた。
まるで異物混入のように浮いた。
それでも特に気にする事もなく2年間やめなかったのは、わたしが溺れていたからか、浮かれていたか。
きっと不器用な優しさのせいだろう。その不器用に甘えていたいと思っていた。
先輩はどこか現実と切り離したように浮きと離れしていて、時間をそこだけ切り取ってしまったかのような存在感だった。