初恋だった人が結婚した【完】
忘れることなんて毛頭なく、彼女と同じ大学に進んだ。
学部は違ったけど、そこでも何かにつけては話しかけて、やっとの思いで付き合い始めた。
彼女が誰を見ているかなんてもう分からない。もう誰のことも見ていないような気がした。
それでも良かった。ただ、僕と同じように笑って泣いて怒ってほしいと思った。
社会人になって仕事を覚えた頃に同棲を持ちかけた。
まさか「いいよ」と言われるとは思ってもいなかった。
一緒に住んで、やることはやっても彼女が誰を見ているのか分からないままだった。
それなのについ、言ってしまった。張り合おうと思ったのかもしれない。
先輩が結婚したと聞いたからかもしれない。
もう10年。時間で言えば僕の方が有利。それが傲りだった。
彼女も、空気も、何もかも止まったような短くて長い沈黙だった。
言ったことで何かが変わることが怖くて「お風呂に入る」と言って逃げて、誤魔化し続けた。