初恋だった人が結婚した【完】


 飲み会の前日彼女は泣いた。
 最近の彼女は泣き虫で嬉しい。

 だけど、何を思って誰を思って泣いているのか分からないのは少し寂しい。


 涙を拭いて、頭を労わるように撫でる。

 「今日、一緒に寝てもいい?」


 幻聴かと思った。彼女から言ってくるなんて初めてのことだ。
 快諾して、ベットに入った。
 
 隣に僕以外の体温があることにドキドキして、優しく抱き寄せた。
 柔軟剤のほのかなフローラルの香りとシャンプーの匂いがした。
 自分と同じ柔軟剤を使っていることを実感して、ここにいるんだと思うと嬉しくてたまらない。


 もう一層、彼女が僕のことが好きじゃなくてもいい。ずっとこのままが時間が止まればいい。
 ここ最近、ずっとこんな陳腐な言葉ばかりが浮かんでいる。それほどまでにずっと好きで、隣にいられればそれだけで充分。

 付き合って3年、ずっと弱みに漬け込み気づかないふりをしている。
 彼女の心を縛り付けている僕は、彼女と同じくらい最低だ。



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