転生うさぎ獣人ですが、天敵ライオン王子の溺愛はお断りします!~肉食系王太子にいろんな意味で食べられそうです~
ライオンが村を襲――じゃなくて、レオン様が村へやって来た翌日。
ベルと楽しいランチタイムを過ごしていると、家のドアを叩く音が聞こえた。
マリルーだったら声を上げて、自分ということをアピールしてくるだろうからマリルーではない。誰か、私に用事でもあるのかしら。
村人が訪ねてくるのは珍しいことではないので、私はなにも考えずに玄関のドアを開けた。
そして訪問者を見て、自分の軽率な行動をひどく後悔することとなる。
「やあリーズ。今日もいい天気だね」
「……」
私の必死な願いは、どうやら神様には届かなかったようだ。
なにも言わずにドアをバタンと閉めると、焦ったような声がドア越しに聞こえてくる。
――なんで二日連続でレオン様が⁉ 国王様に村へ行く必要はないって言われているんじゃないの⁉
私とベルのランチタイムを邪魔しにきたのは、昨日村を騒がせたばかりのレオン様だった。また騎士さんの目を盗んで勝手にやって来たのだろうか。そうだとしたら、あの騎士さんは無能すぎると思う。いや、それか王子の見張りから逃げる技術がすごいのか。はたまた、勝手に独断で村まで来ているのか……なんでもいいけれど、私に関わるのはやめてほしい。と、思っているのに。
「リーズ! 君に会いたくて会いに来たんだ。王宮のシェフに作らせたキャロットケーキをお土産に持ってきたよ。よかったら、ティータイムのお供にどうかな?」
私の気持ちなど知る由もないレオン様は、ドアの向こうからひたすら私に話しかけてくる。しかも、キャロットケーキ付きで。
……王宮のシェフが作ったキャロットケーキなんて、絶対おいしいに決まってる!
若干心が揺らいだが、すぐに頭を振って脳内からケーキを消去した。
「うまそうだな。リーズ、食べなくていいのか? 好きだろう? キャロットケーキ」
ベルはかたくなにドアを開けない私を見ながら、涼しい顔でおやつのマフィンを平らげている。王子が来たことには、なんの違和感も抱いていないようだ。
「た、食べたいけど……その代償に私がレオン様に食べられちゃうかもしれないじゃない!」
「そんなことありえるわけないだろ。本物のライオンならともかく、獣人は獣人を食べたりしない」
私だって、実際はありえないってことは頭ではわかっている。だけど、獣人になったとて怖いものは怖いのだ。
「だいたい、ベルは変に思わないの? レオン様がまたここへ来るなんて!」
「別に。お前に惚れたのなら、どうせまたすぐ来るだろうと予測はしていたしな」
「惚れたって……あんなの、口からでまかせに決まってるわ! 私を好きになる理由がどこにあるっていうの?」
「そんなの俺が知るか。本人に聞けばいいだろう」
ベルったら冷たい。完全にひとごとだと思ってる。
それに、私はベルが大好きなこと知ってるくせに! ちょっとくらい、私がほかの男性に言い寄られてることにやきもち焼いてくれたっていいじゃない!
「……リーズ、どうしても、ドアを開けてはくれないかな?」
ひとりで勝手に腹を立てていると、さっきまで元気だったレオン様の声が、急に寂しげな声色に変わった。
「残念だけど、そろそろ王都に戻らなきゃいけない時間なんだ。せっかく村(ここ)まで来たから、一秒でもいいから君の顔が見たいんだけど……だめかな?」
とても悲しそうな顔をしているのが、声を聞くだけで安易に想像できる。さすがの私にも、罪悪感が芽生えてきた。
でも、相手はライオンのレオン様だ。これは罠の可能性だってある。人の親切心につけこんで、演技をしているだけだったりして……。
疑心暗鬼になっている私に、レオン様は悲しげに言う。
「もう時間がないからあきらめるよ。キャロットケーキはドアの前に置いておくから、僕が去ったあとでにもおいしく食べてくれ。……じゃあ。行くよ」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
顔を見た瞬間にドアを閉め、さらには無視し続けた相手が持ってきたケーキだけをもらうなんて、そんな薄情なことは私にはできなかった。
ベルと楽しいランチタイムを過ごしていると、家のドアを叩く音が聞こえた。
マリルーだったら声を上げて、自分ということをアピールしてくるだろうからマリルーではない。誰か、私に用事でもあるのかしら。
村人が訪ねてくるのは珍しいことではないので、私はなにも考えずに玄関のドアを開けた。
そして訪問者を見て、自分の軽率な行動をひどく後悔することとなる。
「やあリーズ。今日もいい天気だね」
「……」
私の必死な願いは、どうやら神様には届かなかったようだ。
なにも言わずにドアをバタンと閉めると、焦ったような声がドア越しに聞こえてくる。
――なんで二日連続でレオン様が⁉ 国王様に村へ行く必要はないって言われているんじゃないの⁉
私とベルのランチタイムを邪魔しにきたのは、昨日村を騒がせたばかりのレオン様だった。また騎士さんの目を盗んで勝手にやって来たのだろうか。そうだとしたら、あの騎士さんは無能すぎると思う。いや、それか王子の見張りから逃げる技術がすごいのか。はたまた、勝手に独断で村まで来ているのか……なんでもいいけれど、私に関わるのはやめてほしい。と、思っているのに。
「リーズ! 君に会いたくて会いに来たんだ。王宮のシェフに作らせたキャロットケーキをお土産に持ってきたよ。よかったら、ティータイムのお供にどうかな?」
私の気持ちなど知る由もないレオン様は、ドアの向こうからひたすら私に話しかけてくる。しかも、キャロットケーキ付きで。
……王宮のシェフが作ったキャロットケーキなんて、絶対おいしいに決まってる!
若干心が揺らいだが、すぐに頭を振って脳内からケーキを消去した。
「うまそうだな。リーズ、食べなくていいのか? 好きだろう? キャロットケーキ」
ベルはかたくなにドアを開けない私を見ながら、涼しい顔でおやつのマフィンを平らげている。王子が来たことには、なんの違和感も抱いていないようだ。
「た、食べたいけど……その代償に私がレオン様に食べられちゃうかもしれないじゃない!」
「そんなことありえるわけないだろ。本物のライオンならともかく、獣人は獣人を食べたりしない」
私だって、実際はありえないってことは頭ではわかっている。だけど、獣人になったとて怖いものは怖いのだ。
「だいたい、ベルは変に思わないの? レオン様がまたここへ来るなんて!」
「別に。お前に惚れたのなら、どうせまたすぐ来るだろうと予測はしていたしな」
「惚れたって……あんなの、口からでまかせに決まってるわ! 私を好きになる理由がどこにあるっていうの?」
「そんなの俺が知るか。本人に聞けばいいだろう」
ベルったら冷たい。完全にひとごとだと思ってる。
それに、私はベルが大好きなこと知ってるくせに! ちょっとくらい、私がほかの男性に言い寄られてることにやきもち焼いてくれたっていいじゃない!
「……リーズ、どうしても、ドアを開けてはくれないかな?」
ひとりで勝手に腹を立てていると、さっきまで元気だったレオン様の声が、急に寂しげな声色に変わった。
「残念だけど、そろそろ王都に戻らなきゃいけない時間なんだ。せっかく村(ここ)まで来たから、一秒でもいいから君の顔が見たいんだけど……だめかな?」
とても悲しそうな顔をしているのが、声を聞くだけで安易に想像できる。さすがの私にも、罪悪感が芽生えてきた。
でも、相手はライオンのレオン様だ。これは罠の可能性だってある。人の親切心につけこんで、演技をしているだけだったりして……。
疑心暗鬼になっている私に、レオン様は悲しげに言う。
「もう時間がないからあきらめるよ。キャロットケーキはドアの前に置いておくから、僕が去ったあとでにもおいしく食べてくれ。……じゃあ。行くよ」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
顔を見た瞬間にドアを閉め、さらには無視し続けた相手が持ってきたケーキだけをもらうなんて、そんな薄情なことは私にはできなかった。