転生うさぎ獣人ですが、天敵ライオン王子の溺愛はお断りします!~肉食系王太子にいろんな意味で食べられそうです~
「ケーキ、もらいます。ありがとうございます。……好物なのでうれしいです。キャロットケーキ」
そっとドアを開け、隙間からひょっこりと顔を覗かせて私は言った。
「やっぱり開けてくれた。リーズ、君は優しいんだね」
ドアのわずかな隙間から見えたレオン様は、私を見るとうれしそうに顔を綻ばせる。
「やっぱりって……だ、騙したんですか? ドアを開けさせるために……!」
悲しそうな雰囲気が微塵も感じられない王子を見て、私はやっぱりさっきのは演技だったのだと思った。
「やだなあ。騙してなんかないよ。時間がないのは本当だし。……まぁ、ちょっと大げさに寂しそうなふりをしたってのはあるけど、君が顔を見せてくれなくて寂しかったのも事実だよ? あ、これ、キャロットケーキ」
はい、と、レオン様にケーキが入った箱を手渡される。箱からすでに甘いいい香りが漂ってきて、こんな状況でもごくりと喉が鳴った。
「今度はぜひ、一緒に食べられたらうれしいな」
「……遠慮します。もう来なくて大丈夫ですよ。ここへ来たら、国王や騎士さんに怒られるだろうし」
「はは。ツレないなぁ。よけいな心配は無用だよ。それじゃあ、またね」
本当に時間がなかったようで、レオン様は手を振ると颯爽と家の前から去って行った。
――また〝またね〟って。もう来なくていいんだってば
全然私の話を聞いていないレオン様に、私は深くため息をついた。また突拍子もなく私の前に現れるのかと思うと、心臓が持たない気がする。
「なかなか強烈な性格の王子だな。だが、差し入れのチョイスは悪くない」
さっきマフィンを食べたばかりだというのに、ベルは私が手に持つケーキの入った箱に鼻を寄せ、くんくんと鼻を鳴らした。
「そう? 私がうさぎだからキャロットケーキって、安直すぎない? うさぎってべつににんじんが主食ってわけじゃないのよ。うさぎイコールにんじんってイメージが勝手についているだけで――」
「だが、実際リーズの好物なのだから当たっているじゃないか」
「……」
あっさりと論破され、私はなにも言い返せずに黙り込む。
「あの王子、この調子だと明日もまた来るだろうな」
「やめてよ。考えるだけで頭が痛くなるわ。私、レオン様と結婚なんて絶対にしたくないもの」
憂鬱な気分のまま、私はベルと一緒にティータイムを開始した。王子が持ってきてくれたキャロットケーキは今まで食べたどんなキャロットケーキよりもおいしくて、幸せなはずなのに、まんまと餌付けされてしまったようで悔しかった。
そっとドアを開け、隙間からひょっこりと顔を覗かせて私は言った。
「やっぱり開けてくれた。リーズ、君は優しいんだね」
ドアのわずかな隙間から見えたレオン様は、私を見るとうれしそうに顔を綻ばせる。
「やっぱりって……だ、騙したんですか? ドアを開けさせるために……!」
悲しそうな雰囲気が微塵も感じられない王子を見て、私はやっぱりさっきのは演技だったのだと思った。
「やだなあ。騙してなんかないよ。時間がないのは本当だし。……まぁ、ちょっと大げさに寂しそうなふりをしたってのはあるけど、君が顔を見せてくれなくて寂しかったのも事実だよ? あ、これ、キャロットケーキ」
はい、と、レオン様にケーキが入った箱を手渡される。箱からすでに甘いいい香りが漂ってきて、こんな状況でもごくりと喉が鳴った。
「今度はぜひ、一緒に食べられたらうれしいな」
「……遠慮します。もう来なくて大丈夫ですよ。ここへ来たら、国王や騎士さんに怒られるだろうし」
「はは。ツレないなぁ。よけいな心配は無用だよ。それじゃあ、またね」
本当に時間がなかったようで、レオン様は手を振ると颯爽と家の前から去って行った。
――また〝またね〟って。もう来なくていいんだってば
全然私の話を聞いていないレオン様に、私は深くため息をついた。また突拍子もなく私の前に現れるのかと思うと、心臓が持たない気がする。
「なかなか強烈な性格の王子だな。だが、差し入れのチョイスは悪くない」
さっきマフィンを食べたばかりだというのに、ベルは私が手に持つケーキの入った箱に鼻を寄せ、くんくんと鼻を鳴らした。
「そう? 私がうさぎだからキャロットケーキって、安直すぎない? うさぎってべつににんじんが主食ってわけじゃないのよ。うさぎイコールにんじんってイメージが勝手についているだけで――」
「だが、実際リーズの好物なのだから当たっているじゃないか」
「……」
あっさりと論破され、私はなにも言い返せずに黙り込む。
「あの王子、この調子だと明日もまた来るだろうな」
「やめてよ。考えるだけで頭が痛くなるわ。私、レオン様と結婚なんて絶対にしたくないもの」
憂鬱な気分のまま、私はベルと一緒にティータイムを開始した。王子が持ってきてくれたキャロットケーキは今まで食べたどんなキャロットケーキよりもおいしくて、幸せなはずなのに、まんまと餌付けされてしまったようで悔しかった。