転生うさぎ獣人ですが、天敵ライオン王子の溺愛はお断りします!~肉食系王太子にいろんな意味で食べられそうです~
「……そうか。だったらいいが。俺はリーズが幸せになれればそれでいいんだ」
「じゃあ、将来はベルが私と結婚してくれる?」
「それとこれとは話が違う」
「えーん! またベルに振られたっ!」
 今までも何度か求婚したが、いつも返事はノーだ。
「泣き真似する暇があったら、さっさとご飯を作ってくれ。腹が減って死にそうだ」
「ベルが死んだら困るから、今すぐ作ります」
 立ち上がり、エプロンをきゅっと締めると、私は早急に朝食作りに取りかかった。
 朝だから、手軽にサンドイッチでも作ろう。ちょうどパンが余っているし。
「リーズ! ベル! 起きてるー?」
 私がパンに切れ目を入れようとしたそのとき、家の外から聞き慣れた声が聞こえた。
 私はナイフをいったん置いて、玄関の扉を開ける。すると、そこにいたのは同じ村で暮らす親友、マリルーだった。
「マリルー! おはよう。どうしたの?」
「おはよっ。朝ご飯、多く作りすぎちゃったから、まだだったらおすそ分けしようと思って。あ、もう食べちゃってたら昼食にでも」
 そう言って、マリルーにホットケーキとサラダの入った包みを手渡される。まだ温かい。どうやら焼き立てのようだ。
「ナイスタイミング。今から準備しようとしてたところなの。でもベルが待ちきれないみたいだから、ありがたく朝食としていただくわ。マリルーも一緒にどう?」
「もちろん最初からそのつもりっ! 自分の分も持ってきといてよかった!」
「ふふっ。相変わらずそういうところは抜け目ないんだから」
 マリルーは私と同じ十八歳の、フェレットの獣人である。薄紫のショートヘアに、白くて小さな耳がぴょこんと生えている。つぶらな瞳が愛くるしい、元気で明るい女の子だ。
 マリルーの両親が私と両親と仲が良かったので、私がひとりになったとき、マリルーの家族はいつも心配して家に来てくれていた。今もこうして、ご飯をおすそ分けしてくれたりと、いろいろと気にかけてもらっている。
 ホットケーキが冷めないうちに、お茶を淹れてテーブルに並べた。準備ができたところで、予定より少し遅めの朝食タイムだ。よほどお腹が空いていたのか、ベルは大口でホットケーキにかぶりつく。ひとくちで一枚食べきりそうな勢いだ。
「ベル、慌てないで。お母さんにたくさん焼いてもらってきたから」
 そんなベルを見て、マリルーは笑いながらそう言った。
「あ、ねぇねぇ! リーズにとっておきの情報を持って来たわよ」
「とっておき?」
 サラダをむしゃむしゃと食べながら、マリルーが前のめりで話し始める。マリルーは村一番の情報通で、王都や町で起きた最新情報をいち早く手に入れ、自分で新聞記事を書いてそれを売って生活をしている。マリルーは小鳥の言っていることがわかる特殊能力があるようで、仲良しの小鳥から情報を仕入れていると言っていた。獣人の中には稀に、動物と話せる能力を持つ者がいるそうだ。それで、今回はどんな話題なのだろう。
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