転生うさぎ獣人ですが、天敵ライオン王子の溺愛はお断りします!~肉食系王太子にいろんな意味で食べられそうです~
「今国中で話題になってるみたいよ。レオン第一王子の婚約話!」
 レオン第一王子――ノーブル王国の王族、ラファルグ王家の長男だ。
獣人は別の動物同士で子供を産むと、ハーフにならず血の濃いほうの遺伝が優性種として引き継がれる。ラファルグ家は代々ライオンの家系で、ラファルグ家の血を引くものはみなライオンとして生まれてくるようだ。
 だけど、レオン様はほかのライオン獣人と違うところがあった。なんでも遺伝子変異を持って生まれ、耳と尻尾の毛色が真っ黒なのだという。
 こういったことは、例えばライオン獣人と黒豹の獣人が子供を作った時に起きる可能性は僅かだがあるらしい。しかし、現在の国王様と王妃様はどちらともライオン獣人。毛色も普通だ。だから、レオン様の毛色が黒かったことにたいへん驚いたようだ。ライオン獣人同士の子供で黒ライオン獣人が生まれたのは世界で初めてのことらしく、レオン様が生まれたときは大きな話題となったと聞いた。そして、ノーブルの歴史でも、黒いライオンの王子は初めてだと。
 最近王妃様は第二子となるアラン第二王子を出産されたが、アラン王子は普通の毛色のライオン獣人で生まれてきたみたい。
 ……レオン様に実際お目にかかったことはないが、すごくかっこいよくて完璧王子だという噂をよく耳にする。
まぁ、私は今後も王族と関わることはないだろうし、ライオンってだけで恐怖の対象でしかないのだけれど。
「へぇ。興味がないから知らなかったわ。なに? 婚約者がついに決まったの?」
「そうじゃなくて、婚約者を探してるみたいよ。なんでも、いつまで経っても浮いた話がないレオン様に国王がしびれを切らしたとか」
「ふぅん。それで婚約者探しを始めたってことね」
 王子っていうのもたいへんだなぁ。自分のタイミングで結婚もできないんだもの。そう考えれば、どんなことも自由にできる私は、身分は低くても別の意味で恵まれているのかもしれない。上流階級には上流階級なりの、逆らえないしきたりや悩みがあるのだろう。
「でも、あたしたちにはなんの関係もない話だけどね。王族が小動物系獣人を相手にするわけないもん。……あーあ。あたしも乗りたかったなぁ。玉の輿」
 残念そうに、マリルーはテーブルに突っ伏した。
 私はレオン様との結婚に興味はないが、マリルーの気持ちはわかる。だって、王子の婚約者に選ばれるなど夢のまた夢のような話だもの。選ばれたら人生が大きく変わるといっていい。なったらなったでたいへんなことが待ち受けているとは思うが、それでも幸せなことのほうが多いだろう。だって、王族は国の最高権力者。贅沢な毎日はもちろんのこと、国民からも憧れの的だ。加えてレオン様はイケメン(らしい)。
王都や町に住む候補者の女性たちはきっと今頃、もしかしたら自分にもチャンスがあるとそわそわしているに違いない。
「誰が選ばれるのか、私たちは高みの見物としましょうよ」
「候補者にすら選ばれていないのにどこが高みなのよ……はぁ。いつまで指をくわえて下から上を見上げるだけの生活を送ればいいのやら」
 自分からこの話題を振っておきながら、マリルーはすっかり意気消沈している。しばらく手のつけられなかったホットケーキは、すっかり冷めきっていた。
 私はホットケーキを温めなおそうと思い、お皿ごと手に取りキッチンへ移動する。すると、なにやら外が急に騒がしくなったことに気づいた。
「……なんだ?」
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