転生うさぎ獣人ですが、天敵ライオン王子の溺愛はお断りします!~肉食系王太子にいろんな意味で食べられそうです~
「……ところでさ、さっきから僕の耳ばかり見ているけど、そんなに気になる?」
バ、バレてる! だって気になるんだもの。黒いからライオンとわかりづらいせいで、余計に何度も目で追ってしまう。
「わかるよ。この色が珍しいんだろう? 初めて見る人はみんな言うんだ。〝ライオンに見えない〟って」
レオン様に言われて、再度耳にちらりと目を向けた。……たしかに、ライオンって意識せずに黒豹や黒猫と思えば、見えないこともない。多分、レオン様が黄褐色の毛色をしていたら、手の甲にキスをされた時点で失神していた。
「よ、よかった。レオン様が黒いライオンで……」
心の中で言ったつもりが、間違えて声に出してしまった。レオン様は驚いた顔をして、私に問いかける。
「今、なんて?」
「え? レオン様の毛が黒くてよかったなと、そう言ったのですが……」
「……君は普通のライオン獣人のほうが、ライオンらしくていいと思わないのか?」
ライオンらしさなんて、私には百害あって一利なしだ。
「いえ。私個人的には……黒いほうがいいと思います」
だって、そのほうが怖さは減るから。
なんとも自己中な理由を隠して、結論だけを伝える。するとレオン様はそのまま私の両手を取ると、ぎゅっと優しく握った。
「リーズは今いくつなんだい?」
「……じゅ、十八ですけど」
「じゃあ僕の四つ下か! うん。年齢的にも問題はなさそうだ」
見た目が大人びているので、もっと年上かと思っていた。ちなみに問題はないっていうのは……なにが?
不思議そうな顔をする私を見てレオン様の手を握る力が強まった。そして、とんでもないことを言い出したのだ。
「突然なんだけど――リーズ。僕と結婚してほしい」
予想外の突然すぎるプロポーズに周囲はどよめく。マリルー、そしてベルでさえも、口をあんぐりと開けたままだ。
……私がレオン様と結婚? 冗談じゃない。
「絶対無理です! 私、あなたに興味ありませんし!」
握られた手を振りほどき、大きな声で必死に叫んだ。ライオンと結婚なんて言語道断。毎日怯えて暮らすなんてごめんだわ。
私の返答に、その場は一瞬にして静まり返る。レオン様もなにが起きたのかを考えるように、何度もぱちくりと瞬きをしている。
……あれ。私、まずいことをしてしまった? でも、結婚するかどうか決めるのは個人の自由だ。差別社会であっても、上の言うことを絶対聞かなくてはならないという法律はない。
「ごめん。そんなはっきり断られるとは思わなくて、一瞬フリーズしちゃったよ。……そうか。残念だなぁ。でも興味っていうのは、これから持ってもらえばいいだけだよね?」
王子からのプロポーズを断るなんてしたら、相当罵声を浴びせられると覚悟していたが、レオン様は穏やかな口調のままそう言った。今の物言いだと、あきらめないということだろうか。
「……というか、それ以前の問題です」
「それ以前って?」
「私、過去のトラウマでライオンが怖いんです。だから、ライオン獣人も怖いんです。だいたい、どうして私にこだわるのかわかりません。もっと綺麗で身分も高い、王子にふさわしい女性がいるはずです。それなのに……」
出会ったばかりの私と結婚したいだなんて、裏があるとしか思えない。
「僕が君を選んだ理由は簡単さ。ひとめぼれしたんだよ。かわいいうさぎさんの君にね」
「ひ、ひとめぼれっ⁉」
王子の目、どうかしているんじゃないだろうか。ふだん煌びやかなものを見すぎて、一周回って私のような庶民がよく見えてしまっているとか? 美人は三日で飽きると言うから、飽きなさそうな私を? なんにせよ、理解しがたい。
「うん。それより、トラウマっていうのはなに? 昔、ライオン獣人やライオンそのものになにかされたりしたの?」
「……いや……その……」
「うん?」
口ごもる私を見て、レオン様は首を傾げる。前世で本物のうさぎだったときに、動物園仲間のライオンに食べられかけたなんて言えない。頭がおかしいと思われて終わりだ。
「……食べられちゃいそうで、怖いんです」
か細い声でなんとか発せられた言葉は、そんな情けない一言だった。
バ、バレてる! だって気になるんだもの。黒いからライオンとわかりづらいせいで、余計に何度も目で追ってしまう。
「わかるよ。この色が珍しいんだろう? 初めて見る人はみんな言うんだ。〝ライオンに見えない〟って」
レオン様に言われて、再度耳にちらりと目を向けた。……たしかに、ライオンって意識せずに黒豹や黒猫と思えば、見えないこともない。多分、レオン様が黄褐色の毛色をしていたら、手の甲にキスをされた時点で失神していた。
「よ、よかった。レオン様が黒いライオンで……」
心の中で言ったつもりが、間違えて声に出してしまった。レオン様は驚いた顔をして、私に問いかける。
「今、なんて?」
「え? レオン様の毛が黒くてよかったなと、そう言ったのですが……」
「……君は普通のライオン獣人のほうが、ライオンらしくていいと思わないのか?」
ライオンらしさなんて、私には百害あって一利なしだ。
「いえ。私個人的には……黒いほうがいいと思います」
だって、そのほうが怖さは減るから。
なんとも自己中な理由を隠して、結論だけを伝える。するとレオン様はそのまま私の両手を取ると、ぎゅっと優しく握った。
「リーズは今いくつなんだい?」
「……じゅ、十八ですけど」
「じゃあ僕の四つ下か! うん。年齢的にも問題はなさそうだ」
見た目が大人びているので、もっと年上かと思っていた。ちなみに問題はないっていうのは……なにが?
不思議そうな顔をする私を見てレオン様の手を握る力が強まった。そして、とんでもないことを言い出したのだ。
「突然なんだけど――リーズ。僕と結婚してほしい」
予想外の突然すぎるプロポーズに周囲はどよめく。マリルー、そしてベルでさえも、口をあんぐりと開けたままだ。
……私がレオン様と結婚? 冗談じゃない。
「絶対無理です! 私、あなたに興味ありませんし!」
握られた手を振りほどき、大きな声で必死に叫んだ。ライオンと結婚なんて言語道断。毎日怯えて暮らすなんてごめんだわ。
私の返答に、その場は一瞬にして静まり返る。レオン様もなにが起きたのかを考えるように、何度もぱちくりと瞬きをしている。
……あれ。私、まずいことをしてしまった? でも、結婚するかどうか決めるのは個人の自由だ。差別社会であっても、上の言うことを絶対聞かなくてはならないという法律はない。
「ごめん。そんなはっきり断られるとは思わなくて、一瞬フリーズしちゃったよ。……そうか。残念だなぁ。でも興味っていうのは、これから持ってもらえばいいだけだよね?」
王子からのプロポーズを断るなんてしたら、相当罵声を浴びせられると覚悟していたが、レオン様は穏やかな口調のままそう言った。今の物言いだと、あきらめないということだろうか。
「……というか、それ以前の問題です」
「それ以前って?」
「私、過去のトラウマでライオンが怖いんです。だから、ライオン獣人も怖いんです。だいたい、どうして私にこだわるのかわかりません。もっと綺麗で身分も高い、王子にふさわしい女性がいるはずです。それなのに……」
出会ったばかりの私と結婚したいだなんて、裏があるとしか思えない。
「僕が君を選んだ理由は簡単さ。ひとめぼれしたんだよ。かわいいうさぎさんの君にね」
「ひ、ひとめぼれっ⁉」
王子の目、どうかしているんじゃないだろうか。ふだん煌びやかなものを見すぎて、一周回って私のような庶民がよく見えてしまっているとか? 美人は三日で飽きると言うから、飽きなさそうな私を? なんにせよ、理解しがたい。
「うん。それより、トラウマっていうのはなに? 昔、ライオン獣人やライオンそのものになにかされたりしたの?」
「……いや……その……」
「うん?」
口ごもる私を見て、レオン様は首を傾げる。前世で本物のうさぎだったときに、動物園仲間のライオンに食べられかけたなんて言えない。頭がおかしいと思われて終わりだ。
「……食べられちゃいそうで、怖いんです」
か細い声でなんとか発せられた言葉は、そんな情けない一言だった。