義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~
「そうだったんですか。なぜ今まで黙っていたんです?」
「私が姪だと知ったら、気を遣わせてしまうかもしれないと思って。面接のときも、そういう関係を抜きにして私自身を見てほしかったので……言えずじまいですみません」
「気にしなくていいのに。姪であってもなくても採用していましたよ。あなたはうちに必要な人ですから」
そう言って微笑みかけると、彼女はうっすら頬を染めて照れたように俯いた。
碓氷さんはとても真面目で正義感があり、自分に厳しい人だ。弁護士にも向いているんじゃないかと思う。
俺のことを知っていて水簾に来たとは驚いたが……もしかしたら、姪である彼女はなにか知っているかもしれない。御村先生の、あるひとつの疑惑について。
彼への信頼が揺らぐ出来事が脳裏をよぎるも、今は自分の中だけに秘めておく。
「兄とは疎遠になっているからあまり会う機会もないんだが、代わりに霧子から聖くんの活躍ぶりを聞いているよ。いい意味で訴訟に持ち込まない弁護士だと」
頭取が穏やかな笑みを湛えて言った。
家庭トラブルや近隣トラブルなどの民事の場合は、当事者間の対立を激しくさせて訴訟を起こすより、調停レベルで解決するよう心がけている。裁判をするとなると膨大な費用がかかるし、長期に渡るケースもあって精神的にも負担になるだけだからだ。