義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~

「依頼者にとって最もいい方法を模索していると、結果的にそうなるんです。民事で依頼してくる方のほとんどは、冷静に話し合えばそこまで大事にせず和解していただけますから」


 俺の言葉に父ふたりは納得したように頷き、碓氷さんが真面目な表情で口を開く。


「人の気持ちに寄り添って、和解の方向へ導いていくのは難しいです。相手の心理をよく理解して、交渉能力にも長けていないとできることではありません。先生はそれをさらっとやってのけるからすごいんです」


 碓氷さんはいつも褒めすぎだと思うが、素直に「ありがとう」と返すと、彼女は肩を縮めてはにかむように微笑んだ。そんな俺たちを見て、父たちがニンマリとしている。


「霧子は本当に聖くんを好いているなぁ」
「霧子さんのような娘さんがお嫁に来てくれたら、私も嬉しいよ」
「ああ、聖くんとならいい家庭を築いていけるだろう」


 ……来たか、結婚の話が。断るタイミングは今だな。

 ふたりが勝手に盛り上がり始め、俺が切り出そうと姿勢を正した、そのとき。

 碓氷さんが日本酒をくいっと呷り、お猪口をコンッとテーブルに置いた。強めに響いた音に皆が驚き、場が静まり返る。
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