義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~
「おかえりなさい。どうでしたか?」
「ああ、霧子さんはとても聖を好いてくれていたよ。人生のパートナーも聖しか考えられないそうだ」
上着を脱ぎながら父が報告するのを聞き、彼女はきらりと目を輝かせる。
「そう! じゃあ順調にいきそうなのね」
「いや、孫の顔もわりと早く見られるかもしれないと私も思っていたんだが、聖のほうが否認していてなぁ……」
煮え切らない調子の父に、上着を受け取った雪乃さんがぱちぱちと瞬きをする。次いで、なぜかぽっと頬を赤らめた。
「あら、避妊するのは誠実な証拠じゃない。ちゃんと順序を守ろうとしているんでしょう?」
「その〝避妊〟じゃないです、雪乃さん」
違う意味に受け取っていると気づき、口の端を引きつらせて即座に訂正した。
父は〝霧子さんと恋仲だというのは事実ではないと、聖が主張している〟という意味で使ったのだろう。紛らわしい発言はやめてほしい。
それ以前に、雪乃さんにちゃんと説明していないだろう。俺が食事会をするとだけ聞いていたら、結婚に前向きなのだと誤解しても仕方ない。
雪乃さんに変な期待をさせていた父をギロリと睨むと、彼はバツが悪そうに笑って「説明するから」と俺を宥めようとしていた。
なんだかどっと疲れたな……。こういうときは六花の顔を見て癒されたい。
無意識に彼女の部屋のほうを見上げ、幾度となくため息をついた。