義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~

 なんとなくしゃがんで壁の陰に隠れ、手すりの隙間からリビングを覗く。コートを脱いでいる彼らに母が近寄っていくところだ。


「おかえりなさい。どうでしたか?」
「ああ、霧子さんはとても聖を好いてくれていたよ。人生のパートナーも聖しか考えられないそうだ」


 ズキリと胸が痛む。予想通り、碓氷さんが聖さんに恋しているのは確実のようだ。

 お互いのお父様の前でそんな宣言をしたのだから、きっと結婚はトントン拍子で進むのだろう。

 希望の光が弱まっていく私の耳に、母の興奮気味な声が届く。


「そう! じゃあ順調にいきそうなのね」
「いや、孫の顔もわりと早く見られそうだと私も思っていたんだが、聖のほうが否認していてなぁ……」


 なんだか煮え切らない口調だな……と、雅臣さんの様子を不思議に思った次の瞬間。とんでもない言葉が飛び出し、私は叫びそうになる口元を咄嗟にタオルで押さえた。

 ひ、避妊!? 聖さんと碓氷さんは、そういう関係になっていたの?

 結婚したら当然子作りはするだろうし、それ以前に大人の男女なのだから関係を持っていたっておかしくはない。それくらいわかっているけど、避妊なんて生々しい単語は聞きたくなかった……!
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