義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~
もう聞いていられなくて、私は音を立てずに素早く自分の部屋に戻り、半ば衝動的に小夏に電話をかけていた。
タイミングよく『どうしたの?』と出てくれた彼女に、私は半泣き状態でぶちまける。
「聖さんたち……やることやってたんだよ~ちゃんと避妊はしてるみたいだけどさ~」
『いきなりなにを聞かせられてるんだ、私は』
呆れた調子の小夏だったが、私が本気でショックを受けているのがわかると親身になって慰めてくれた。
この先ふたりが結婚式をしたり、子供ができたと報告されたりするたびに、こんなつらさを味わうことになるのだ。逃げ場がないと心が病んでしまいそう。
『長年持ってた想いを捨てるのって勇気いるけど、その人がすべてじゃないからね。私はアキと付き合ってみるのもアリだと思うよ』
小夏に背中を押され、少し心が穏やかになる。いつも励ましてくれる彼女に「ありがとう」と心からお礼を言い、電話を切った。
アキちゃんとは、あれからも連絡を取り合っている。大学は二月の上旬から春休みに入るらしい。私は三月中旬まで講義があるものの、長く帰省するようなのでたびたび会うつもりだ。
「本格的に次の恋に踏み出したほうがいいのかも……」
メッセージアプリに並ぶ友達のアイコンの中、綺麗なネイルのそれを見つめて力なく呟いた。