義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~

「成人式のときはごめんね、あんな別れ方になっちゃって」


 聖さんに連れられていった場面を思い出して苦笑すると、アキちゃんもバツが悪そうに笑って首を横に振る。


「いいんだよ。でも、あのあとりっちゃんは大丈夫だったの? 水篠さんとケンカにならなかった?」
「あー、なりかけた……けど、大丈夫。もう過保護で困っちゃうよ。だから今日は内緒で来ちゃった」


 いたずらっぽく笑って、ひょいっと肩を上げてみせた。

 そう、今日アキちゃんと会うことは聖さんには言っていない。普通の兄妹は、自分の予定をいちいち報告しないだろう。なのに、ちょっぴり罪悪感が湧くのはどうしてなのか謎だけれど。

 彼の話題を出されるとそれしか考えられなくなってしまうので、私は思考を切り替えるために持っていた小さな紙袋を差し出す。


「それより、はい。これ」
「なに?」
「トリュフ作ったの。明日バレンタインだから」
「ほんと⁉ ありがとー!」


 アキちゃんは、ぱあっと表情を輝かせて嬉しそうに受け取った。

 喜んでもらえてよかったとほっとしたのもつかの間、小首をかしげた彼に顔を覗き込まれる。


「これは友チョコ? それとも本命?」
< 124 / 265 >

この作品をシェア

pagetop