義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~
慌ただしく皆さんにお礼を言って玄関へ向かおうとするとき、瀧さんに軽く肩を叩かれた。キョトンとして振り仰ぐと、意味深に口角を上げる彼の整った顔が近づく。
「聖は、相当六花ちゃんのことを大事にしてるね。恋人レベルで」
耳元でこっそり囁かれ、じわじわと頬が熱くなった。あからさまに動揺していると、今の言葉が聞こえたわけではなさそうだが、聖さんに肩を抱かれて引き離される。
またまた強引に連れていかれる私に、瀧さんと藤宮さんがニンマリとして手を振り、碓氷さんは無表情でこちらを見つめていた。
聖さんの車に乗り込み、十数分でアキちゃんの家に到着した。時刻は午後七時半を過ぎている。
静かな住宅街で家々から温かな光がこぼれ、先ほどの物々しい出来事がずいぶん前のことのように感じた。
私の隣に座るアキちゃんは、幾度となく聖さんに頭を下げる。
「水篠さん、ご迷惑をおかけしてすみません。本当にありがとうございました」
「いえ。またなにかあればすぐにご連絡ください」
弁護士モードで微笑む彼にお礼を告げたあと、アキちゃんは私に向き直った。そして、私があげたチョコレートの小さな紙袋をひょいと持ち上げ、いつもの笑みを浮かべる。