義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~
きちんと家に入るのを見届けてから、車はゆっくり発進する。
私と聖さんの間に会話はないが、気まずい空気が流れているわけでもない。お互いに思いを巡らせているのだろうと、なんとなくわかる。
「まだ、帰りたくないな……」
順調に家に近づいていく景色を眺めながら、ぽつりと呟いた。視線を前方に戻すと、バックミラー越しに彼と目が合う。
「もうちょっと、ふたりでいたい」
聖さんへの恋心はどうにも諦められないと認めたら、なんだか大胆になる。素直にわがままを口にすると、ミラーに映る彼の表情が弁護士モードから切り替わって柔らかくなった。
「俺も同じこと考えてた」
穏やかな口調で彼もそう言い、車は曲がるはずの道を直進していった。
向かったのは聖さんがひとり暮らしをしていたレジデンス。ここにお邪魔するのは誕生日プレゼントをもらったあの日以来、二度目だ。
暖房をつけるとすぐに部屋が暖まり始め、お互いにコートを脱ぐ。
「ココア飲む?」
「大丈夫。それより、傷見せて」
私が言うと、聖さんはいたずらっぽく「謝るのはもうなしだよ」と念を押してソファに腰かけた。