義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~

 私も隣に座り、彼の頬にそっと手を添えて傷の様子を見る。口の中が切れているようなので私には手当てのしようがないが、さすがに縫うほどではないだろう。


「カッコよかったよ、六花」
「え?」


 突然そんなふうに言われ、私は頬に触れたままの状態で固まった。聖さんは穏やかに微笑んでいる。


「あの状況でよく言い返したな。意外と肝が据わってるんだなって驚いた」
「あー……アキちゃんの気持ちを考えたら腹が立って、つい」


 少々決まりが悪くなって苦笑を漏らした。彼は優しいからこんなふうに褒めてくれるけれど、軽率だった気がして仕方ない。

 頬から手を離そうとすると、彼の手が私のそれを掴んだ。男らしさを感じるぬくもりに包まれ、目を丸くする。


「六花の好きなところ、またひとつ増えた」


 告白されたわけではないのに、〝好き〟の二文字にドキンと胸が踊る。


「今日彼を連れてきたのも六花の判断だろ? 困っている人に手を差し伸べて、自分より人のことを思いやって声を上げる勇気がある。友達だとしてもなかなかできることじゃない」
「……聖さんこそ、私たちを守ってくれてありがとう」


 私は謙遜して首を横に振り、改めてお礼を言った。
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