義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~

 四月も残り少なくなってきたある日、早番の仕事を終えた私は母の車に乗り込んだ。別荘に引っ越してから、母は職場が近くなったため自転車を使い、私は車を借りて通勤している。

 午後三時頃に帰宅すると、門の前にひとりの男性がいるのが見えた。私服なので宅配業者ではなさそうだし来客だろうかと、車で近づきながら窺っていたものの、どうも様子がおかしい。

 インターホンを押そうとしてはやめ、門の前をウロウロしている。すれ違いざまによく観察すると、五十代くらいの痩せ型の男性で、どこにでもいそうなおじさんという感じの印象だ。

 その顔になんとなく見覚えがある気がしたが、それより挙動不審なのが奇妙で一度自宅を通り過ぎてしまった。

 なんだろう、不審者? もしそうだとしたら、皆に相談しないと。

 アキちゃんの一件もあったので慎重になる。胸をざわつかせて回り道をしてからもう一度帰ると、もうそこには誰もいなかった。

 ちょっと気味が悪いが、ただの気にしすぎかもしれない。駐車場に車を停めたあと一応辺りを見回して、怪しい影がなさそうなのを確認してから門を潜った。
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