義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~
膝の上でぐっと手を握り、俯きがちに覇気のない声を紡ぐ。
「だから……別れたほうがいいってことですか?」
「いいえ。あなたがそれでも今の関係を続けようと思うなら、そうすればいい。ただ、私もますます彼を奪いたくなるけど」
ぶれない声が耳に届き、胸がぎりぎりと締めつけられた。やはり碓氷さんはまだ聖さんのことが好きなのだ。
でも、私だって譲れない。そもそもこれまでのことは全部推測にしか過ぎないのだから、ただの杞憂かもしれない。
重苦しい空気が漂う中、車はいつの間にか元のコンビニの辺りに来ていた。碓氷さんは少し反省したのか、決まりが悪そうな顔をして目を合わせずに口を開く。
「ごめんなさい、具合が悪いのにいろいろ言って。会社、そこだったかしら?」
「はい、身体はもう大丈夫なので。助けてくれて、本当にありがとうございました」
なんとか気丈に返事をし、お礼も忘れずに伝えた。
体調は戻ったが、胸の中は複雑な思いでぐちゃぐちゃになっている。真実を明らかにしたほうがいいのかすらわからなくて、私はただ自分の握った手を見つめていた。