義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~
壁に隠れつつ覗いてみると、エスプレッソマシンの前に立つふたりがデスクに座っている碓氷さんを見てギクリとしている。
おそらく彼女の前でする話ではないと察したのだろう。瀧がバツが悪そうに謝る。
「あー、ごめん。霧子ちゃんの気持ち考えずに盛り上がっちゃって。でも、君も知っておいたほうがいいと思ってさ」
「なんのことやら、意味がわかりませんが」
「人のモノになっちゃうと、さすがにこたえるよねぇ」
「ちょっと黙っててください」
しみじみと頷いている瀧に、碓氷さんは棒読みで返した。声に感情は乗せられていないのに、ピリピリしているのが伝わってくる。
そこで俺はなんとなく察した。おそらく瀧は単純に口が軽いわけでなく、あえてこの話題を出して俺に固執している碓氷さんに〝もう諦めたほうがいい〟と示唆しているのだろう。彼なりの気遣いなのだと思う。
一方、藤宮さんは碓氷さんの肩に手を置き、もう片方の手でガッツポーズを作ってみせる。
「霧子さん、切り替えて次にいきましょう。一度フラれてるのに、『有罪率九十九・九パーセントの刑事事件も、とことん事実を追い求めれば逆転勝訴する可能性もある』って諦めないくらいの強メンタルがあるから大丈夫!」
「茜さん、守秘義務」