義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~
わずかに口角を上げているものの、その表情は沈んでいるので申し訳なさが募る。しかし、彼女には新たな恋に踏み出してもらいたい。
「この判決は誰にも覆せません。再審の申し立てをするのは賢明ではありませんよ」
『逆転勝訴する可能性はある』と言っていた彼女に、この争いは諦めたほうがいいという意味を込めて告げた。
それを理解したであろう彼女は、一度まつ毛を伏せたあと、止まっていた手を動かしながらおもむろに口を開く。
「……自分が納得するまで、悪あがきさせてください。ふたりの間に少しでもほころびがあれば、そこを突かせていただきます」
まだ諦めない様子ではあっても、以前のような力強さがなくなった声を残して、碓氷さんは自分のカップを持って席に戻っていく。
時間はかかりそうだが、彼女が吹っ切れるのを待つしかないだろう。なぜ脈のない俺なんかをそこまで想い続けられるのか謎だが……六花には執着してしまう自分と重ね合わせれば、気持ちはわからないでもないな。
複雑な気持ちを抱きつつ、緑茶がカップの中ですっかり濃くなっているのに気づき、急いでパックを取り出した。