義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~

 思考を切り替え、今日もクライアントのために知恵を振り絞る。今は、夫の不倫が発覚したので離婚を決意し、慰謝料と謝罪を請求したいという内容の相談を受けているところだ。

 依頼者である結婚五年目の三十代の山本さんは、怒りや悲しみがごちゃ混ぜになったような顔で打ち明ける。


「不倫相手は、夫の義理の妹なんです。彼の親が再婚していて、連れ子同士で」


 相手の関係にはさすがに驚いた。当然俺と六花はやましいことをしているわけではないが、自分たちと同じ関係性の人間が不貞行為をしていたというのはこちらの気分も悪くなる。

 そんな個人的な感情は表には出さず、苦痛を与えられた彼女の気持ちに寄り添う。


「それはつらい思いをされましたね。彼は不倫を認めていますか?」
「いいえ……証拠を見せてもなにかと理由をつけて認めません。なので、離婚にも応じてもらえなくて」


 山本さんの言う証拠となるものを見せてもらうと、義妹との〝愛してるよ〟などのメッセージのやり取りだった。親密さは窺えるが、肉体関係を持ったとわかるものでないと証拠としては不十分だと扱われる可能性がある。
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