義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~

「裁判をする場合は確固たる証拠が必要ですが、交渉次第では証拠がなくても謝罪や慰謝料を請求できます。つまり、相手に不貞行為を白状させることができれば証拠不要となるんです」


 ひとつの解決策を提示すると、彼女は縋るようにゆっくり目線を上げる。


「相手方はなんとしても隠し通そうとするでしょうから、交渉力がないと自白させるのは難しい。当事者同士では感情的になって話し合いもうまく進まないケースが多いですしね。私にお任せいただければ、裁判をせずに解決するよう尽力いたします」


 裁判をすれば金銭での解決となり、相手に謝罪を命じるような判決が下されることはない。その点、交渉の段階なら謝罪も要求できるため、依頼者にとって少しは気がラクになる要素にもなりえるだろう。

 山本さんはその提案に納得した様子で、「よろしくお願いします……!」と頭を下げた。


 それからも三十分間みっちりと相談し、まず慰謝料請求の内容証明郵便を送ることを決めた。

 幾分かすっきりとした表情で事務所をあとにする山本さんを見送りながら、俺の頭には先ほど彼女が口にした言葉がよぎる。
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