義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~
そりゃあ、もし奇跡的に恋人になれたとして、ネクタイを緩めながら〝六花……もう待てない〟なんて余裕のない顔で言われて、押し倒されちゃったりなんかしちゃったら最高だけど……!
「聖さんとはそんなふうにならないから」
「顔、顔」
「喜んでるじゃん」
妄想が行きすぎて、堪えようとしてもニヤけてしまうおかしな顔をさらす私に、ふたりがほぼ同時にツッコんだ。
彼女たちは、しばしば妄想で現実逃避している私を知っている。特に聖さんがその対象だと行き過ぎてしまうのだが、恋をしているのだから仕方ない。
私の誕生日を迎えたらどうなるだろうとあれこれ予想して楽しんだあと、アキちゃんがふいに真面目な調子になって言う。
「二十歳ってさ、やっぱり特別な年だよね。やっと大人になったんだって胸を張れる反面、一気に責任が増す感じもして。とにかく、大きな転機になるじゃない」
ひと足先に二十歳を迎えている彼女は、いつにも増して大人びて見える。憂いすら感じる表情に見入っていると、存在感のあるまつ毛に縁取られた瞳がすっと私を捉えた。