義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~
「地方ではいろんなジャンルの案件を扱わなければいけないから大変だろう」
「そうですね、その分やりがいは大きいです。地域の方との繋がりができるので、情報も集めやすいですし。依頼者だけでなく、その家族のことまで親身に考えてあげられるようになりました」
近況を話すのはここまでにしようか。そろそろ本題に入ろうと気持ちを切り替え、ゴトリとグラスを置いて口を開く。
「俺をそういう考えにさせたのは、ひとりの女の子だったんです」
「女の子?」
「ええ。その子の父親は政治家の元秘書で、十二年前に収賄の罪で有罪判決を下されました」
俺の言葉に御村先生はぴくりと反応し、グラスを口から離す。
「元秘書……十二年前の収賄……」
「覚えておいでですか? 筧の側近だった、菅屋さんのことを」
その名前を出した途端、彼の表情が強張ったのを見逃さなかった。この人はなにかやましいことを隠していると、直感的に感じる。
「……ああ、もちろん覚えている。私が担当した事件だからね」
グラスに目線を落として軽く頷く彼に、俺は淡々と話す。
「菅屋さんとは家族ぐるみで付き合いがあったんです。二年ほど前に、俺は事件とは別の個人的な理由で彼に会いに行きました。そこで、思わぬ話を耳にしたんですよ」