義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~
「おかげさまで、職場は大丈夫」
「職場〝は〟?」
訝しげに目を細めて、細かいところを突いてくる彼女にギクリとした。
例の件で悩んでいることを相談しようかと迷っていると、アキちゃんは私の顔を覗き込んで「なんか元気がないように見えるなぁ」と呟く。
「ねえ、時間あるならお茶しない? アタシ、ぶらぶらしてただけだから」
とってもありがたい申し出に、私はふたつ返事でOKした。
銀座通りは食べ歩きにもってこいのスポットでもあるが、今はゆっくり話すためオープンテラスのあるカフェに入った。
外国人が多く滞在していた軽井沢では昔からコーヒー文化が根づいていて、本格的な一杯を味わえるカフェがたくさんある。少し早めのお昼ということで、コーヒーをお供に焼き立てパンを食べながら悩みを打ち明けた。
開放的な雰囲気と香ばしい香りを堪能していたアキちゃんだったが、私の話を聞いていつの間にかひょっとこみたいな顔になっている。
「記憶喪失だったってこと⁉」
「うん、まだわかんないけど……いや、八割方そうかな」
信じられないと言いたげに声を上げる彼女に、ため息交じりに返した。通りを楽しそうに歩いていく人たちが、なんだか遠くに感じる。