義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~
一緒にいれば大丈夫。きっと、つらくても乗り越えられるよ。
確かにそう思っていたのに、どうして私は──。
「……六花?」
うっすら頭に響いていた私を呼ぶ声が、次第に大きく聞こえてきてゆっくりと瞼を開ける。目尻から耳にかけてが冷たい。これは、涙?
ぼんやりとした視界に、天井をバックにして私を覗き込む、さらりとした黒髪の男の子が映る。
「……ひー、くん……?」
夢の中で呼んでいたあだ名をそのまま口にした。クリアになってきた視界にいるのは男の子ではなく、大人の聖さんだ。
彼は驚いたように目を丸くしているけれど、私もすぐには状況を理解できなかった。さっきまで外にいたはずなのに、どうして自分の部屋のベッドで寝ているんだろう。
「あれ? 私……」
「大丈夫か? 突然気を失ったんだ。とりあえず休ませようとここに運んできたけど、具合が悪ければ病院に連れていくよ」
私の涙を指で拭う聖さんに心配そうに言われ、今度は自分が驚いた。気を失ったなんて初めてだから。
もしかして、記憶を取り戻したせい? 迷走神経なんたらってやつだろうか。