義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~

 私が彼の支えになっていたなんて、確かに信じられない。でも、そんなふうに思ってくれているのが素直に嬉しくて胸が一杯になる。


「私も、聖さんに助けてもらってばっかり……」


 一緒にいた時間がどれだけかけがえのないものだったか。十二年間もそんな大事なことを忘れてしまっていた自分が悔しくて、申し訳なくて胸が苦しい。


「どうして忘れてたんだろう。あの頃から、聖さんのこと大好きだったのに。ずっとそばにいるって言ったのに」


 後悔と涙がぶわっと溢れて、声が情けなくひっくり返った。

 子供の頃の〝好き〟は、たぶん恋愛感情とはまた違っていたけれど、誰よりも特別な存在だったのは確かだ。私の心に居座るのは、いつだって聖さんしかいない。

 嗚咽を漏らす私を、聖さんは慈愛に満ちた笑みを浮かべて自分の胸に引き寄せた。


「いいんだよ、今もこれからも一緒にいるんだから。思い出してくれただけで十分」


 未来でも私たちは一緒にいるのだとはっきり示してもらえたようで、不安がみるみる小さくなっていく。

 私が罪を犯した父の娘だと知っていても、昔の記憶を失くしていても、ずっとそばにいてくれた彼だ。きっとなにがあっても離れはしないだろう。
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