義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~
「すでにひとり暮らししているし、今の場所が気に入っている。六花だって、急に男が一緒に住むとなったらくつろげないだろう」
「もちろんそれも考慮するさ。とりあえずの提案だ」
聖さんが続けた言葉には私への気遣いも含まれていて、雅臣さんも強引にすすめる気はないようだ。
現在、聖さんは別荘のように高級感漂う低層レジデンスに住んでいる。場所は知っていても、部屋の中に入ったことはないけれど。……改めて考えると切ないな。
それはさておき、私と母が引っ越すのは当然だとしても、聖さんはひとり暮らしのままでいいと私も思う。もう三十歳なのだし。
すると、私の母がおもむろに口を開く。
「私も雅臣さんも、皆で賑やかに暮らすのが夢だったのよ。お互い、片親でずっとやってきたから」
少し切なげに微笑む彼女の言葉が、胸に浸透していく。
家族全員で賑やかに暮らすのは、私にとっても憧れだった。両親がいて、兄妹もいる。そういう普通の家庭は、自分には手に入らないものだと思っていたから。
「それにね、一緒に生活すれば新しい絆が生まれるんじゃないかとも思ったの。せっかく家族になるのに、離れているのも寂しいし。でも、ふたりが嫌なら無理にとは言わないわ」