義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~
金色のクーゲルが輝くクリスマスツリーをバックに、聖さんはじっと私を見つめたあと、ふっと苦笑を漏らす。
「……欲がないね、六花は。お願いされなくても、離れるつもりなんてないのに」
少しの呆れが交ざった大人の笑みを浮かべる彼に、私の胸がじんわりと熱を持つ。
『離れるつもりなんてない』……そんなふうに思ってくれていたのだとわかっただけで、心の痛かった部分が癒されていく気がした。
しばらく足を止めていた私たちの周りには、いつの間にか人気が少なくなっている。もうすぐライトアップが終わる時刻が迫っているのだろう。
時間と寒さに気づいたかのごとく、聖さんはぶるっと身を震わせた。そして、ほんの数秒考えを巡らせるような様子を見せ、ふいに私に顔を近づける。
「六花、ちょっと俺の家に寄っていかない?」
いきなりの予想外すぎる誘いに、私はギョッとして目を見開く。
「っ、えぇ!?」
「行こう。寒いし」
私の返事も聞かず、聖さんは私の手を取って駐車場のほうへと歩き出した。お互い手袋をしているから繋いでいる感覚はあまりないのに、冷え切った指先が熱を持ち始める。
聖さんの家に行っちゃうの、私!? なんでそんな展開に!?
頭の中は軽いパニック状態で、繋がれていないほうの手で意味なくマフラーを口元まで引っ張り上げ、ただただ彼のあとについていくしかなかった。