義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~
例の件……?
気になるワードにぴくりと反応し耳をそばだてようとしたとき、母にくいっと袖を引っ張られた。彼女はそのまま御神橋のほうを指差して歩き出す。
「お邪魔しちゃいけないから、私たちはあっちに行ってましょ」
「邪魔?」
ちょっぴり心外なひと言に眉をひそめるも、うきうきした様子の母の耳には入っていないらしい。
「新年早々、おめでたい話が聞けるかもしれないわね」
「どういうこと?」
やきもきして母を問い詰める私に、彼女はにんまりとしてやっと教えてくれる。
「雅臣さんと、霧子さんのお父さんがお友達でね。この間一緒に飲んだときに、〝ちょうどお互いの子供がお相手を募集してるから、くっつけさせたらいいんじゃないか〟って話になったらしくて。たぶん今、食事会の約束を取りつけているんだと思うの」
その意味をすぐに察した私は、血の気が引くような感覚を覚えた。
「これでうまくいったら、聖くんと霧子さん、結婚するかもしれないわね」
──頭を殴られたかのごとく、大きな衝撃が走る。
持ったままだった聖さんのおみくじが、力の抜けた手からひらひらと地面に落ちていった。