義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~
私が食物栄養の世界に興味を持ったのは、おそらく母の影響である。
片親でも母は料理に手を抜かず、バランスのいい食事を作ってくれているおかげで健康に育ってこられた。食べ物の力ってすごいなと思い、気がついたら食の道に進みたいと考えるようになっていたのだ。
しかしパソコンの操作が苦手な私は、講義の内容は理解できてもレポートなどをまとめるのに苦労していて、そのたび聖さんを頼っている。
片膝を立てて座っている彼は、隣でぶつぶつ言っている私にふっと苦笑を漏らす。
「ちゃんと単位取って卒業してくれよ。俺も家庭教師は卒業したいから」
なにげなく口にされた言葉に、チクリと胸が痛んだ。
……もういい加減にやめたいよね、家庭教師なんて。私が社会人になれば必然的に終わるが、こうして会えなくなると思うとものすごく寂しい。彼がそれを望んでいるのも。
気分が沈みかけていたとき、玄関のドアが開く音と「ただいま~」という声が聞こえてはっとした。もう母が帰ってくる時間になっていたらしい。
ドアを開けて顔を出すと、狭いダイニングキッチンでコートを着たままの母が買い物袋をテーブルに置いていた。