義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~
重い空気になるのが耐えられなくて、私は口を尖らせて正直に言う。
「聖さん、怖い」
「……ごめん」
ボソッとこぼした私のひとことに、彼は若干反省したような声であっさり謝った。自分でも強引に連れてきたことを悪く思っているんだろうか。
どうしてそうしたのかを知りたくて、ぱっと浮かぶ理由を挙げてみる。
「私が、時間が過ぎてるのに気づかなかったから? それとも……」
「男に抱かれてたから」
私が言うより先に、前を見据えたままの彼からどことなく棘のある声が返ってきた。
私が抱きしめられていたのが不機嫌の理由だったらしい。おそらく、お正月のときに忠告したのに男性に隙を見せたから怒っているのだろう。
アキちゃんは信頼できる友達だし、心配されるようなことはない。でも、聖さんはアキちゃんの事情を知らないから、悪い男に引っかかりそうだったと誤解しているのかもしれない。
「あの子はアキちゃんだよ。いつも一緒に遊んでる女の子の」
「女の子?」
聖さんはようやくこちらに目を向け、戸惑いの表情を浮かべた。さっきの姿を見れば完全に男性だと思っているだろうから、意味がわからないだろう。