義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~
俺は聖人君子ではない。もう家庭教師でもないし、義兄のままでいるつもりもない。
「そんなにとろけた顔で誘われたら、〝いいお義兄ちゃん〟じゃいられなくなる」
もともと、機が熟したら六花のすべてを手に入れるつもりだったのだ。好きな子を囲ったこの状況で、なにもしないなんて無理だろう。
驚きと戸惑いを露わにする彼女に、ゆっくり顔を近づける。見開いていた目がぎゅっと閉じられ、唇が触れる瞬間……。
規則正しい息づかいに違和感を覚えて顔を上げてみると、彼女は明らかに夢の世界へ行ってしまっていた。
「……この状況で?」
すーすーと気持ちよさそうに寝息を立てる六花を見て、一気に気が抜ける。欲情はすんなりと治まり、うなだれつつ苦笑を漏らした。
まったく、どれだけ無自覚に俺を煽ってくるんだ。少しは理解してほしい。六花のすべてが俺を虜にしているってことを。
ほっとすると共に、若干の悔しさも感じる。彼女の隣に腰かけて手を伸ばし、桜色の唇を親指でそっとなぞる。
「……ファーストキスは、もうもらってるけどね」
うっすら唇を開けた、ちょっとまぬけで愛しい寝顔を見つめて呟いた。
彼女も知らない、俺たちの秘密があることは、まだこの胸の奥にしまっておこう。