義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~
執務室では、瀧とそれぞれL字型の黒いデスクを使用している。自分の席で準備書面の起案を始めようとすると、瀧が折った新聞を眺めながら入ってきた。
「筧、ついに贈収賄疑惑で逮捕か。ほかにも私的流用だのなんだの、叩けば埃が出そうだし、悪徳政治家ってのはでたらめじゃなさそうだな」
彼の大きなひとり言の中に出てきた名前に、俺はぴくりと反応する。今朝のニュースでも大々的に報じられていたから知っているが。
筧は国交省の政務官であり、以前からあまりよろしくない噂が飛び交っている。歯に衣着せぬ物言いをするため、発言が問題になるときもしばしば。
噂を鵜呑みにしたりはしないが、俺も個人的に悪い意味で気になっている人物ではある。贈収賄が真実かどうかは、これから明るみになる……と思いたい。
直後に、藤宮さんが瀧を追うように執務室へやってきた。コーヒーを口へ運びつつ新聞を眺める瀧の姿を見て、彼女の目が据わる。