別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
私は図書館へ走った。

そして記憶をなくした頃の新聞を片っ端から調べ始める。

父や母に何度か事故について尋ねたことがある。
でもいつも、思い出さなくていいと堅く口をつぐんでしまうのだ。

それなら、自分で調べるしかない。


「十二月くらいよね、たしか」


入院している間に、冬休みが終わっていた気がする。

そのまま退園したため友達と会えなかったが、そもそも記憶が欠けてしまった私は、特に寂しいという感情もなかった。


しばらく調べていると、ふと手が止まった。


「五歳女児刺されて重体、って……」


私?
記事を読み進むと、鳥肌が立ち始めた。


五歳男児の誘拐を目論んだ佐藤肇(さとうはじめ)容疑者二十六歳は、男児が公園から帰宅するところを狙ったが、友人の女児が騒いだため持っていた文化包丁で女児の背中を斬りつけた。
周囲にいた大人が気づき、佐藤容疑者は逃走。
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