別れを選びましたが、赤ちゃんを宿した私を一途な救急医は深愛で絡めとる
好みが同じだと、たしかに親近感が湧く。
凛は特にあの絵本に思い入れがあるし……。


「あれっ?」


そんなことを考えていたら、幼い頃、座り込んで絵本を広げている自分の姿が頭をよぎった。

凛と同じくらいの年齢だった気もするけれど、よくわからない。

ただ……隣に誰かいた。
その人のほうを向いて私は笑っていた。

でも、それが誰なのかはわからない。母だろうか。


「どうしたの?」
「なんでもないよ。あれ、祐くんかな?」


保育園が見えてきたとき、向かい側からクラスメイトの男の子がスーツ姿のお父さんと手をつないで歩いてくるのが見えた。


「祐くん!」


彼が大好きな凛は、大声を張りあげて呼んでいる。
すると彼が駆け寄ってきた。


「凛ちゃん、行こ」


凛は祐くんが出した手を握り、振り返りもせずに園の中へと駆けていく。

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